【Coming Back to You】

7月 15, 2010 at 11:24 pm (ヴァンパイア騎士)

「――――っあ」

高い天井の着いたベッドの中で額から汗を流しシーツを強く握り必死に夢から覚めようと幼い子供が喘ぐ。

「・・ん・・っう・・っぅぅ」
涙混じる呼吸の声が彼の小さな口から漏れる。足のつま先も手の指先にも力が入り体の主を現実へ連れ戻そうともがく。
だが、夢は放してくれない。
体からの汗が子供の寝巻きを重くする。閉じた瞳からは涙が絶えず流れる。

「――ぁああっ」
子供の唇に鋭い痛みがはしり、やっと目が開く。
必死に酸素を求め小さな体は大きく息を吸い込む。だがなぜかところどころ胸が痞え痛みとかすかな空気しか入ってこない。
子供の唇から喉の奥へと血が流れ込む味がする。
やっとのことで覚めた目は天井へ向いているが何も捕らえてない。水溜りのが瞳からあふれ出し、底が無いかのように頬へこぼれてく。
子供の唇から喉の奥へと血が流れ込む味がする。その味が夢へと連れ戻そうとする。

「っぁ・・あ・・」

しゃにむにとその子は手足をばたつけ抵抗する。

夢の世界へ帰るのはいやだ。見たくない。見たくない。知らない。知らない。違う・・

「ケホッ」
まだうまく整ってない呼吸が流れ込んでくる血と絡まってしまう。
「あ・・っあ ケホッ・・ケホッ」
泣いているのか咳き込んでいるのかはっきりとしないが、子供は少し安堵する。こうしていれば眠らないですむ。身体を半分に起こしシーツの下にある膝へと彼はうつむいた時急にドアが開く音がした。

「枢!!」

虚ろな瞳で子供は自分に向かって足って来る女性を捕らえる。
涙がさらに彼のその瞳に集う

「枢!」

女性は強く男の子を抱きしめる。

「枢、枢、枢」
彼の名前が連呼される。だが彼は小さく振るえしゃっくりをあげる事しかできない。

「ごめんね、枢。ごめんね」
優しい手が子供の後ろ髪を撫でる。咳は止まったが涙は相変わらずとまらない。
「ごめんね、まだ一人で眠るのには早かったね。怖かったね。」

そうだった。彼はついこの間四つの誕生日を向かえ、自分の部屋で眠るようになったのだった。それまでは、父と母の間に収まり、毎夜夢も見ずに眠っていた。枢はしっかりと自分を抱きこんでいる女性を見上げた。

夢の残り香が思考を霞む
「・・・おカア・・サマ?」
かすれた声でどこかに疑問を残し、枢は樹里に確認する。

「怖い夢でも見たのか、枢?」
いつの間にか部屋に入ってきたのか、父親の悠も隣にいる。彼もまた手を伸ばし、枢の髪を撫でた。
「唇を切ったのか・・」

血の流れは止まったが小さな唇はまだ赤く染まっている。樹里の腕から枢を持ち上げ、自分の目線と合うように腕の中で抱えた。

「んー」
ペロリと悠の舌が優しく枢の唇をなぞる

「あぁ!私がキスしてとってあげようと思ってたのに!」

父親の急な行動に涙も止め放心している枢に今度は樹里が背伸びをし枢と軽く唇を合わせる。そしてポンポンと彼女は子供の背中を叩き、その反動で枢は悠の肩にぐったりともたれ掛かった。小さな手は自然と父親の首に回り、安堵のため息がもれる。
クスクスと樹里のまろやか笑みが聞こえる。

「やっぱり、もう少し一緒に寝ましょ。ね?ほら、お母様達の部屋に行って着替えて、今度は私の腕の中で甘えてね」

やっと留まった涙が何故かまた出てきそうで枢は額を悠の肩に摺り寄せた。枢を連れ二人は自分達の部屋へと歩き出す。

「・・・お父様・・」と枢がぽつり囁いたら、悠の優しい手が息子の頭を抱え込む。
幼い子供はやってくる眠りの誘いに身を今度は抵抗せず預けた。

広告
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。